先週の古書店散策 (1997年8月)

 〜 京都下鴨神社古本市 〜 by 散人 


京都市内の古書店を中心とする京都古書研究会の下鴨神社での納涼古本祭りですが、 今年は二日目と最終日に行ってきました。 期待は、もちろん百円均一コーナーの袋売りセールなのですが、 春の古書市では、この袋売りセールがなくなってしまい、 非常に残念な思いをしましたので、行こうか行くまいかの若干の迷いがあったものの、 とりあえず、どうなることやらとの思いで、開催二日目に会場を覗いてみました。 すると、例年の如く百円均一コーナーはあったので、 最終日の袋売りセールの可能性はあるわけで、再び最終日に出直すことにしたのでした。 この古書市の袋売りセールというのは、 近年、春夏秋と行われる京都古書研究会の古書市では、最終日の恒例行事となっているもので、 各店から出品される共通の百円均一コーナーにおいて、 指定の袋を購入し(\500)、その袋に好きな本を詰めるだけ詰めることが出来るというものです。

さて今回は、最終日2時頃出かけると、もう既に袋売りは始まっており、 とりあえず、袋を買って、参加することにしました。 毎度のことながら、百円均一で売れ残った本が、袋売りセールに出されますので、 一見すると、あまり欲しい本がないのですが、 人ごみにまみれて本を漁っているうちに、あれも欲しい、これも欲しいと、 袋が一杯になっていきました。文庫本、単行本新旧色々であわせて39冊。 袋山盛りに入れることが出来、とりたてて目玉になる本はありませんでしたが、 それなりに満足しています。

以下簡単に紹介しますと、一番の収穫は河出書房『世界大思想全集 哲学・文芸思想編20』(昭和30年)、 ヤスパースの「現代の精神的状況」と、ハイデガーの「カントと形而上学」が入ったものです。 後はこまごましたものですが、 中央公論社「世界の文学シリーズ」の端本で『スタンダール』、 河出書房の「世界文学全集」シリーズ『ドストエフスキー罪と罰』、 河出書房新社「日本文学全集」で『佐藤春夫集』、 集英社「日本の詩」の『島崎藤村集』などなど……、 どれもハードカバーなので、かなりかさばりました。

同じくハードカバーでは、『増訂民法要説』法律文化社という本も購入しましたが、 おそらく大学の教科書として使われた本なのでしょう、 若干薄い書き込みはありますが、1993年で全くの美本でした。 こういう教科書類は、一般解説書としての完成度は低く、 かといって学術的な価値もなく、帯に短し襷に長し、 もはや漬け物石にもならない本です。 しかも、通常は私の守備範囲とする分野でもなく、 おそらく読んでみることはないでしょうが、 何かの資料として役立つ何パーセントかの確率にかけて、 今回はとりあえず蒐集品目に加えてみました。

とはいえ、同じ教科書類、解説書といっても、有斐閣新書の『入門経済学』などは、 専門が異なるとはいえ、読んでみたくなる可能性が若干高い一冊と言えるでしょうし、 保田清『道徳哲学の基本』法律文化社1988は、重複購入の可能性もありますが、 資料として、手許に置いておく価値が十分にあるようにも思われます。 古いものでは、大正13年、西宮藤朝『現代哲学思潮体系』新光社というのも購入しましたが、 あえて通読する可能性は低いものの、資料として置いておきたい気がしています。

資料といえば、『朝日年鑑』1991年版や、京王百貨店『大古書市出品目録抄』1991、 旧制東京高校同窓会『会員名簿』平成1-2年、『現代用語の基礎知識』1968年も、 なかなかの収穫であったといえましょう。 年鑑類を眺めるのは私の趣味とするところですし、 古書市の目録は、愛書家にとっては極めて資料性の高いものです。 こうした資料は、新しいものには新しいなりの価値があり、 古いものには古いなりの価値がありますし、 中途半端なものにも、それなりの価値があるといえましょう。 同窓会名簿といえば、おそらく物故者の遺族が売り払ったものなのでしょうが、 旧制東京高校が、現在のどこに当たるのか……、 東大教養学部なのか、それとも東京都立大学なのか、 実際のところよく知りませんが、 退職者に関しても昔の勤務先を後生大事に掲載していて、 ご老人たちの昔日への思いや、 学歴社会、企業社会といったもののへのこだわりのようなものを考えさせられました。 『現代用語の基礎知識』1968年版に関しては、昔の「現代用語」など、 今さら見ても意味がないような気もしないではありませんが、 1968年といえば、まだ私が生まれて間もない頃で、 その頃の現代用語というのも、結構現在にも通じるものも多く、 懐かしくはないけれど、それなりに面白いものです。

あと、文庫本関係では、全くの美本もかなりありました。 重複購入の可能性はありますが、とりあえず買っておこうと思ったものでは、 北杜夫『さびしい王様』、井伏鱒二『山椒魚』、 ゲーテや芥川龍之介、伊藤左千夫などの名作や、 若干古びていましたが、サルトル『悪魔と神』、『コクトー詩集』なども購入しました。

文庫本で17冊、その他で22冊の合計39冊。 袋に詰めれるだけ詰めましたが、 もし、百円均一で買っていれば、3900円ですので、 それが、500円で選べたというのは、やはり嬉しい限りです。 もっとも、一冊百円であったならば、 おそらく購入しないだろうといった本も多数ありますが……。

蛇足ですが、各店の売り場では、吉岡書店が、全品半額セールをやっていて、 お値打ちの本も半額になっていました。 その他のところでは、良い本は高いし、 安いのは、それなりのものばかりといったところでしょうか……。 なかには、相変わらず、それなりの本を高く売る店もあり、 さすがは京都の古書店だと、改めて思いました。

97/9/1 散人


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