先週の古書店散策 (1997年2月 前半) by 散人 


 早いもので、二月も終わりました。二月の古書店散策は、2/1(土)に高槻のBOOK OFFを訪れたきり、以降のことは何も書かずにきましたが、先週、今週と、久々に 古書店散策を堪能しました。2/1のことは、1月後半分の古書店散策記で触れました ので、今回は空白期間に少し触れながら、先週の古書店散策を中心に書いてみるこ とにします。

 例年二月は、一年のうちで最も書籍購入数の少ない月ですが、今年も例年と違わ ない結果となったようです。はて、どうしたものかと日記張をひもとけば、寒さの ためか、そもそも書店・古書店に出かけることがなくなっています。かといって、 まったくどこへも行かなかったかといえば、そうでもなく、 某ホームページのオフ会に参加させて頂いたり、その他諸々の活動はありました。書籍関連で言え ば、近場の大学図書館で油を売ることが多かったように思います。一般に大学図書 館は、目的の明確でない部外者の来訪を嫌うところが多いのですが、縁あってよく 訪れています。国立大学間の共通閲覧証の場合だと、名前を書かされたり、部局の 図書館には紹介状が要ったりと、面倒なことが多いのですが、世の中、色々な抜け 道があるものだと、なかば疑問を感じながらも、もっと市民に開放してもらいたい ものだと思いながら、本当によく利用させてもらっています。

 それはともかく、訪れた古書店といえば、2/18(火)、大阪日本橋近辺をまわりま した。この日は、北風が強く、本当に寒い一日でしたが、JR鶴橋駅から、上本町 方面へと歩きました。いつもは近鉄線を利用する区間ですが、わざわざ切符を買う のも何なので、今回は歩くことにしたのでした。あまりに寒いので、上本町に着い たら、とりあえず近鉄百貨店に入って、立ち読みなど。30分ほど本を読んでいると、 体も暖まってきます。三一新書から出ている野宿についての本でしたが、以前私も 野宿に凝っていたことがあり、こういう本が出ていたのかと、嬉しい気がします。

 さて、上本町といえば、天地書房の二店。全集類、学術書、趣味の本その 他諸々、品揃えの豊富な店です。『アリストテレス全集』17冊揃、『プラトン全集』 16冊揃、ともに45K円にて置いています。だいたいこれが今の相場でしょうが、あと ひと声あれば、欲しいところです。今回はざっと店内を見て歩いただけでした。
 千日前通りを西へと歩くと、カエデ書房という古書店を発見。今まで気づかなかっ たのか、どこかから移転してきたのか、それとも、新規開店した店だと思います。 古い流行本から新しい本が中心で、アダルト関係も少々といったところです。とりた て欲しい本はなく、軽く見ただけで店を出ました。

 日本橋では、昭和書籍日本橋ブックセンターなど三店。近鉄電車を利用す る時など、わりとよく訪れる古書店です。店の入り口付近には、アダルト雑誌が多く、 サラリーマンで賑わっています。ここも、固い本から柔らかい本まで、本当に品揃え の豊富な店です。安楽死関連の一般書がたくさんあり、そのうち二冊を選りました。 西野辰吉『安楽 生と死』三一書房(\2000→\1300)、平沢一郎『麻薬・安楽死の最 前線 挑戦するオランダ』東京書籍(\1600→900)の2冊です。どうしても買わねば ならないという本でもないのですが、何となく買ってしまいました。
 今回はこれで帰ろうかと思っていたのですが、店内をぶらついていると、写真集 のコーナーで目が止まりました。私は、一般に「藝術的」な写真というものには、 あまり関心がないのですが、自然の風景は大好きで、風景写真や鉄道写真など、今 後、所蔵図書を増やしていきたいと思っています。といっても、他人様が撮った写 真を眺めるよりも、実際の風景を眺めているほうが好きなので、高い写真集をわざ わざ買う気はしないのですが、安くて趣味の合う古書があると、ついつい欲しくな ってきます。今回もそんな数冊が目にとまりました。1995年、PARCO出版発行 の『朝の本』『午後の本』『夕暮れの本』『真夜中の本』の4冊で、他にもシ リーズ本があるようです。どこかインドの古典音楽ラーガを彷彿させる名称にも惹か れますし、それぞれの時間を象徴するような美しい風景写真と短い散文詩がとてもマ ッチしています。私の出会いたいと思っている風景が、まさにここに凝縮されている 気がしました。
 この本と並んで、『空ノ名前』の一連のシリーズもありましたが、こちらは新刊 書店のみならず古書店でもかなりよく見かけますので、もっと普及して値下がりを 待つことにしました。この他、河北秀也監修の『風景の中の思想』(\2000→\1300)、 『風景からの手紙』(\2000→\1200)、1996年、ビジネス社発行もありました。河北 秀也氏の『デザイン原論』新曜社を目にして以来、もう一度で会いたいと思ってい たこともあり、ちょうど良い機会なので購入することにしました。河北氏が制作し てきた大分の地場焼酎「いいちこ」のポスターを集めて、コメントをつけたもので す。ポスターにされた風景写真は、まさに風景のイデアとでも呼べるような、風景 の中の風景、凡人には探せども探しえないような風景だと思われました。私にとっ ては、奇を衒った現代藝術よりも、こういった商業写真の方が、瞠目させられるこ とが多いように思います。このことは、私のみならず、日本には多数の鉄道写真の ファンの方がおられますが、鉄道写真の創り出す世界とも、どこか似ているように 思われました。

 日本橋ブックセンターを出ると、霙まじりの雨が吹雪いています。宮本書店に寄 ってから、日本橋の電気街に行こうと思っていたのですが、雪の中歩くのも辛いの で、地下街を歩いて、難波へ行くことにしました。さすが地下街は暖かです。郵便 局に寄ってから、大阪球場の古書街へ。各店を見て歩きました。奥まった所にある 関西ブックセンターにて、大星光史『老荘神仙の思想』(\980→\600)、 『秘密結社がわかる本』日本文芸社(\1300→800)を購入。どちらも私が興味を持つ テーマの一つです。古書店散策はこれにて終了。外に出ると雪は止んでいました。 ここから慌てて日本橋電気街へと急ぎました。スタンバイ、ソフマップの中古コー ナーなどをのぞくと、もう午後七時をまわっています。鞄には本がいっぱいで、な んだかとても疲れました。通天閣を眺めながら、新今宮へと歩くと、ぶらぶらして いるおっちゃんが多くなります。JRで京橋へ。京阪電車にて帰路につきました。 京都では雪が積もっているのではないかという心配は杞憂に終わり、ただ寒さだけ が身にこたえます。といっても、寒い一日、思いがけない風景写真に出会えて、歩 きまわった甲斐があったとつくづく思われました。


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