奥の細道
閑さや岩にしみいる蝉の聲
響きわたる蝉の声が、山寺の静寂をいっそう感じさせると言われるように、
喧噪の中の静寂は、身近な所にも存在しているように思われる。
例えば、都会の喧噪の中を歩くと、妙に意識が研ぎ澄まされて、
自分の心の中に響く声だけが頭の中を駆けめぐることがある。

小学生の頃、裏庭でよく一人で砂遊びをしていたが、
とある夏の昼下がり、蝉の声ばかりがまわりに響いていた。
誰の姿も見えず、ただ聞こえるのは、蝉の声ばかりである。
その時、私だけがこの世に取り残されてしまったのではないかという
妙な不安感に襲われたのを今でも鮮明に覚えている。
その感覚は、どこか底なしの不安感であると同時に、
魂が自分から抜けだし、喧噪の静寂の中で浮遊していたようなそんな気がしている。


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