太平の世の武士町人は物見遊山を好んだ。花を愛し、風景を眺め、 古蹟を訪う事はすなわち風流な最も上品な嗜みとして尊ばれていたので、 実際にはそれほどの興味を持たないものも、時にはこれを衒ったに相違ない。
風雅な趣味というものも、流行になってしまえば、 せっかくの風趣も失われてしまいます。 俗人の付和雷同、ニーチェのいう畜群本能とでもいったものへの 痛烈な皮肉混じりで、荷風らしさがあらわれているように思われます。