Labyrinth
木瓜は面白い花である。
枝は頑固であつて、曲がつたことがない。
そんなら真直ぐかと云ふと、決して真直でもない。
只真直な短かい枝に、真直な短かい枝がある角度で衝突して、
斜に構へつつ全体が出来上がつて居る。
そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。
柔らかい葉さへ、ちらちら着ける。

評して見ると木瓜は花のうちで、
愚かにして悟つたものであろう。

世間には拙を守ると云う人がある。
此人が来世に生まれ変わると、屹度(きっと)木瓜になる。
余も木瓜になりたい。

(漱石『草枕』)


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