旅の手紙 タイ、インド、ネパール 1992年


聖なるガンガーのほとりで ヴァラナシ

 ヴァラナシにやってきましたが、まだガンガーには行っていません。ここインドで は、何よりも客引きのしつこさには頭にきます。トルコやメキシコなどにも、しつこ い客引きはいましたが、ここインドとは量的・質的にも大きく異なるようです。乞食 については多少同情しながらも、無視していますが、客引きについては、同情心は持 ち得ないと怒っています。といっても、実質的な被害を受けた訳ではありませんが、 精神的に疲れ果ててしまいました。こちらが尋ねたことにはまともに答えず、調子の いいことばかり、ぺらぺらと喋られると、白けてしまいます。あまり、なれなれしく、 親しげにされるのは、もともと胡散臭そうで、嫌いなのですが、ここインドではそう いったことがあまりにも多くて、つくづく、嫌になります。  インドでは、他人の腹をさぐらずには、いられない状況に数多く出くわしますが、 それらは他人への不信(人間不信)という、人間の根本の姿が明らかに(あからさま に)されただけかもしれません。騙されていることに気づかず、もしくは気づいてい たとしても気づかないふりをして、上手に騙され、その行為を親切にしてもらえたの だといって喜ぶのも、一つの選択かもしれません。明らかにコミッション目当てのリ キシャワラーに、感謝の手紙を出していた日本人がいたりしますが、その手紙の送り 手にとっては、心温まるコミュニケーションであり、リキシャワラーにとっては、金 離れのいい上客であるという、騙すー騙されるの関係を越えた、ほのぼのとしたもの なのかもしれません。高い買物をさせられたところで、インド人(リキシャワラーた ちなど)にとっての大金は、日本人にとっては、たいした額でない場合も多く、少し ぼられたところで、どうなることでもなく、めくじらを立てて騙されたと騒ぐのは、 大人げのないことかもしれません。しかし、今の私にとって、そういった関係を持つ 気にはなれず、下司の勘ぐりをしながら、自閉化するという方向に向かっています。 我々の人間関係の多くは、あからさまになっていないものの、騙す・騙されるという ような関係にあることが多いようですが、そこにどれだけコミットしていくかは、人 それぞれの選択かもしれません。

 それはともかく、北インドを旅していますが、常夏の国・バンコクと比べるとかな り寒く、ふるえています。ヴァラナシでは温かいシャワーの出る二百四十一ルピー( 約千二百円)の部屋に泊まっています。アグラで泊まった二十五ルピーの宿に比べれ ば、値段だけの価値はあるようです。   (ヴァラナシ I・M 92.2)


 朝夕の冷え込みや、乾燥した空気のためか、とうとう風邪をひいてしまいました。 その後、ゆっくり養生していたので、風邪の方は峠を越えたのですが、今度はお腹の 具合いも悪くなり、初めて薬を服用しました。

 今日、カルカッタ行きの列車の切符を購入してきましたが、百ルピー(約五百円) の賄賂をとられてしまいました。賄賂がないと売り切れだとか、後で来いと言われた りして、全くことが運びません。知り合ったドイツ人も自分から賄賂を係官に渡した そうです。カルカッタへは一等寝台車の切符にしましたが、運賃・予約料が四百十二 ルピーであるのに、賄賂の百ルピーというのは、かなりの高額です。少々頭にきてい ます。

 ここヴァラナシは、ヒンズー教えの聖地で、ガンジス河で沐浴する人々などで有名 ですが、実際、日の出の頃、河を見に行くと、多くの人が祈りながら、行水していた りして、ヴァラナシの聖地たるゆえんを感じさせてくれます。ヒンズー教徒にとって は、ガンジス河で行水したり、その水を飲んだりすることは宗教的な意味を持つそう ですが、洗濯する人や燃やした死体の灰を投げ入れる人、排泄する人の姿を見ると、 飲むはおろか、とても行水する気にはなれません。異教徒(無宗教)の私にとっては、 いうなれば単なる不潔な河ですが、ひたすら祈り続ける人を見ると、迷信的であると 馬鹿にする気が起こると同時に、何か神秘的なものを感じさせてくれるように思えた りします。

 旅も半ば近くになりましたが、インドの旅を楽しむことは、難しいようです。しつ こい客引きやお金(賄賂や喜捨など)要求する人々などで精神的に疲れてしまいます し、路上はほこりっぽく、リクシャの往来も激しく、ゆっくりと散歩をすることも出 来ません。とはいうものの、欧米や他のアジア諸国の旅とは、受ける印象が質的にも 異なり、来たこと自体は、無駄ではなかったようです。風邪をひいたり、お腹をこわ したり、切符の購入や両替など、あらゆることに時間をとられ、なかなか思うように 行動できませんが、自分が思うように行動できないところが、旅の面白さであるとい えるのかもしれないと思ったりしています。  (ヴァラナシ I・M 92.2)


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